私に文才は無いに等しいのです。
適切な表現も思い浮かばず、どうにかまともな形で仕上がってくれないかと常に四苦八苦しています。
でもそれが楽しいってゆーのはもしかしてMの域に入ってしまうんでしょーか(笑)
と、ゆーことで「紅玉の君」久々に続きです。
お付き合い下さる方は続きよりどぞv
声は国王の右脇に控えた重臣から漏れていた。
軽く俯き口元に手を当てている。先程漏れた声から考えて、微かに震えている肩は怒りではなく笑いを堪えているせいであろう。
「無能、無能ね。ぶは、違いねぇ。確かにこんな方法しか取れなかったんなら反論の仕様がねぇでさあ」
「カルネ」
爆笑するタイミングを逸したらしく、身体を九の字に曲げて苦しげに僅かな声を漏らしながら笑い続ける重臣の名を、国王が呆れた様に呼ぶ。けれどその響きに咎める色はなく、パティもにやにやと人の悪い笑みを浮かべるばかりだった。
此処に来て漸く、コウシロウは自身が試されていたことに気付いた。
それは国王不在時の働きのみではなく、彼の度胸をも、と言う意味だ。
ただ、重臣等の反応は及第点を与えられたのか、それとも激情に振り回される愚か者と判断されたのか怪しいところだった為に、自然コウシロウの表情も複雑なものとなる。同時に、このまま家臣全てに目通りして試すには些か非効率的ではないかと首を傾げる思いでもあった。
そんなコウシロウの心中を読み取ったかのように口を開いたのは国王だった。未だ笑い続けるカルネを軽く小突いてから鼻を鳴らした。
「わざわざ全員呼び出して試す気なぞあるか。何の為に留守中こいつ等を置いていったと思ってる」
それはつまり、両人は家臣等の監視を請け負っていたと言うことだ。
「監視と言ったってそんな隅々まで見てるわけじゃない。せいぜい上司の目が逸れた時に調子に乗るか、それとも真面目に職務をこなすかぐらいだ」
パティが肩を竦めて言うと、漸く笑いの発作が治まったカルネが後を続ける。
「それと真面目にこなしてる奴らが調子に乗った奴に対してはどういった反応を示すか、な」
その中で二人の眼鏡に適った人物が国王の前まで連れ出されるのだと言う。
すると自分はある程度は認められたと思って良いのだろうかと、コウシロウは首を傾げた。
認められたのなら素直に嬉しい。「年齢の割に考えも雰囲気も老成している」と、からかい混じりに評される彼ではあったが、まだ二十歳にも満たない青年だ。他者から評価されることは誇らしいし、蔑まれることは我慢ならない。もっともこういった感情に年齢は関係ないのだろうが、若い分その感情の起伏が激しいことは否めない。
更に言えばその激しい感情に翻弄されて、反逆とも言える台詞を吐いたのだと数分前の自分を思い出してコウシロウは身を震わせた。
「それで」
低く呟いた声は酷くひび割れた響きだった。口の中はからからに渇いて咽喉の痛みすら覚える。
その呟きに三者の視線が集まる。なんとか声を絞り出そうと唇を舐めたコウシロウは、数回肩を上下させてから恭しく膝をついた。
「それで、陛下に不敬を働いた私の処分は如何なさるのでしょうか」
出来ることなら、家族には何の処分も下されないと良い。そう願いはするものの、自身の罪は本人のみならず家長である父親にも責任が生じる。罪が重ければ家族、親族にも害が及ぶことは当然のことだった。
全てが自分の浅はかさのために。そう思うと身が千切れそうだった。
しかしきつく唇を噛み締めて沙汰を待つコウシロウに、国王は面倒臭そうに手を振っただけだった。
「処分も何もあるか。そんなもの必要ないわ」
「は・・・・?」
一瞬耳を疑った。
国王を無能呼ばわりし、挙句王座を譲れ、と言い放った家臣に対しての言葉ではない。
お咎めなしの言葉に喜びは湧いてこない。寧ろ大いに戸惑い、その後に沸きあがったのはまたしても国王に対しての怒りだった。
王たるもの家臣の逆心を軽々しく見逃すことは許されない。
これこそ身勝手な怒りだった。若さゆえの潔癖さとも青臭さとも言えるだろうが、コウシロウにとってはそれが真理だった。
家族へ累が及ぶことは望まないが、自身の不始末に対しては処罰を与えてもらわねばならない。それを見逃しては、国王を侮るものが必ず出てくる。
そう信じて尚言い募ろうと膝を進める。それを止めたのは国王の低い笑い声だった。
「見逃すのではない。寧ろ逆だ。お前には玉座を奪うことは出来ない、その意志すらない、そう確信したが故だ」
にやりと口元を歪ませた国王の瞳は、けれど鋭い光をもってコウシロウを射抜いた。
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コウシロウさんの青臭さが書いててやたらと楽しい(笑)
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