ゾロ、誕生日おめでとう!
そして当たり前の如くに何も準備できてないよ。ごめんよゾロ。でも祝う気は満々だよ。
・・・なので、ゾロ誕を機に停滞していた連載をこちらのブログで再開しようかとテンプレートも変えてみました(笑)
ブログでの再開理由はいっぺんにアップできるほど書き溜められないからに他ならない。
と、ゆーことで、今後ブログの方でじわじわと「碧落の王」を書き溜めていこうかと思います。
宜しければおつきあいくださいませ。
本日から始まるのは「碧落~」本編ではなく、メインはオヤジーズの番外編となります。
ゾロ誕記念で始めるのに何故おやじ・・・・。
それでも良いよ!と言う方は、続きからどうぞ!
「今でも信じられません。あれが陛下の御子だなんて・・・!」
呆れ三割苛立ち三割。残りの四割は、一言で表現するには困難な感情を綯い交ぜにした息子の台詞に、コウシロウはひそりと笑みを浮かべた。
紅玉の君
王宮の中枢に近い位置で働くコウシロウは、貴族としての位も決して低くは無い。それを象徴するのは、片手では全く足りない部屋数に両手に入るはずも無い使用人の数だ。コウシロウの家族はゾロだけである為、時折無駄な広さと人数だと思わなくも無いが、この家を丁度良い広さに改装すること自体無駄な消費であるし、使用人達はこの仕事で給料を得て生活しているのだから簡単に暇を出すわけにもいかない。結果、贅沢だなと思いながらも現状に甘んじているのであった。
最も邸内で働く面々は皆気持ちが良く信頼出来る者達で、コウシロウとしては誰かに暇を出す気は更々無いのもまた事実である。
更に言えば使用人等の人柄が気持ち良いのは、主人であるコウシロウの人となりに影響される部分が多大にあるのだが、当の主人はその事実に気付いていない。加えて息子のゾロも、父親と違わず相手の出自に拘らずに礼を尽くす人間であった為、最古参の女中頭曰く「旦那様」と「坊ちゃま」は使用人達に深く慕われていた。
その「坊ちゃま」が珍しく愚痴めいたことを漏らしていたのは、彼女にとって新鮮な驚きであった。夕食を終え寛ぐ親子に温かい紅茶を入れながら目を見張る。
「おやまあ。一度御会いしただけの御方をそのように仰るなんて、坊ちゃまらしくないこと」
若干揶揄る様に告げると、ゾロは決まり悪そうに視線を泳がせた。
「・・・・坊ちゃまは止めてくれないか。もう十五だぞ」
「未だ十五ですよ。騎士になられたと言っても、私から見れば坊ちゃまなんてまだまだ子供でいらっしゃいます」
そう言って笑う女中頭は恰幅の良い溌剌とした女性だが、年齢は既に六十後半である。そんな彼女にしてみれば、四十代のコウシロウでさえ子供の様なものであるのだから、ゾロなど一人前には程遠い。「坊ちゃま」呼びに拘る辺りが尚更子供っぽい、とは言わないでおくのは彼女なりの優しさだ。
その優しさに気付いているのか否か憮然としたゾロの様子は、彼女の目に過ぎし日の面影を映し出した。今現在、仄かな笑みを浮かべて二人のやり取りを傍観している父親が、彼の息子と同じ年頃であった時の思い出。
「懐かしいですねぇ。旦那様も始めて陛下に御会いになった時は、そのように言われておりましたね」
突然矛先を向けられたコウシロウが、香り高い紅茶のカップを口元まで運んだところで手を止める。余計な事を、と目で訴えられたが、彼女は気にした風も無くさらりと受け流した。
「え。そうなんですか、父上?」
「そうなんですよ。それが今ではすっかり仲良くなられて」
受け流せずに問うたのは、勿論ゾロである。そのゾロにこれまたさらりと答えてくれた彼女は、言外に「坊ちゃまの憂いを晴らすために当時の話をしておやりなさい」と訴えている。コウシロウが幼い頃から面倒を見てくれていた彼女は、彼にとって半分母親の様なもので、その彼女は「息子」の様なコウシロウの子供であるゾロは当然「孫」の様な存在で、殊の外可愛がっているのだ。
こうなってしまうと、コウシロウには彼女に逆らう手立てが無い。
「ああ・・・・あの頃はこんな王の下で働くなんて真っ平だと思ったねぇ」
知らず漏れる溜息をカップで受け止めて、しぶしぶと口を開く。視界の端に女中頭が「よしよし」といった風に頷いているのが見えた。そんな大人達の水面下の攻防に気付かぬまま、ゾロは目の前の飲み物の事も忘れてコウシロウを凝視していた。
「あの、だったらどうして、父上は陛下を選ばれたんですか?」
ゾロの目には父と国王は強い絆で結ばれているようにしか見えなかった。実際父が選んだ人物は国王だったと言質を得ている。それが、何故。
興味津々の態で身を乗り出したゾロに、女中頭がやんわりと紅茶を勧める。暗に礼儀を注意された息子が赤面して腰を落ち着けたのに苦笑してから、コウシロウは過ぎ去った時を手繰り寄せるように目を細め、ゆったりと語りだした。
++++++++++++++++++++++++++
性格そっくりな国王親子に対する似てそうで似てない臣下親子の第一印象は何気にそっくりでした(笑)
PR